この夏、息子は高校野球を引退しました。
けれど、息子が「付属大学には進まず、ほかの大学を受験したい」と話したのは、引退した後ではありません。
夏の大会に向けて、レギュラー争いが本格化していたゴールデンウィーク前の懇談でした。
その懇談は、付属大学へ進むのであれば、本人の意思を最終確認する場でもありました。親である私は、そのまま付属大学へ進学するものだと思っていました。
ところが、そこで息子は外部受験をしたいと言い出しました。
理由は、行きたい学部が見つからないということだけではありませんでした。
遠方の高校で寮生活を続けてきた息子には、高校卒業後はいったん地元へ帰りたいという思いがありました。付属大学へ進めば、大学でも寮や下宿での生活が続きます。
長く家を離れて暮らしてきた息子にとって、もう一度地元で生活したいという気持ちは、付属大学へ進まなかった大きな理由でした。
しかし、外部受験をすると決めても、わが家には大学受験の知識がほとんどありません。
この記事では、高校野球の最後の夏を終えてからAO入試を知ったわが家が、どのように受験方法を調べ、離れて暮らす息子の進路と向き合い始めたのかをお伝えします。
AO入試は現在、正式には「総合型選抜」と呼ばれています。この記事では、わが家が知ったときの呼び方と、読者の方になじみのある表現として「AO入試」も併記します。
入試制度や出願条件は、大学・学部・年度によって異なります。受験するときは、必ず大学が発行する最新の募集要項をご確認ください。
高校球児を目指した中学生のころ、大学までは見えていなかった
思い返せば、中学生で高校を選んだとき、わが家が考えていたのは「どこなら甲子園を目指せるか」ということでした。
大学にどのような学部があるのか。その先で何を学びたいのか。そこまでは調べていませんでした。
高校球児を目指す中学生の段階で、大学の学部まで調べて高校を決める家庭は、そう多くないのではないでしょうか。
少なくとも、当時のわが家にはそこまで先を見る余裕がありませんでした。
高校へ入ってからも、生活の中心は野球です。
ゴールデンウィーク前に外部受験の意思は決まったものの、息子は最後の夏に向けたレギュラー争いの真っただ中。親も子も、高校野球に使える時間と気持ちをすべて注いでいました。
高校から聞いていたのは、付属大学への進学についてが中心です。外部受験の具体的な方法について、わが家は説明を受けていませんでした。
それでも当時は、受験について調べる余裕がありませんでした。
最後の夏が終わったとき、すでに夏休みになっていた
息子の高校野球は、夏の大会で敗れて終わりました。
その時には、すでに1学期が終わり、夏休みに入っていました。
高校野球が終わると、息子はすぐに地元へ帰ってきました。しかし、親子とも大学受験の方法をほとんど知りません。
何から調べればよいのかさえ分からない状態でした。
そんなとき、地元の野球の先輩から声をかけてもらいました。
「AO入試を受けてみたら?」
わが家がAO入試について初めて調べ始めたのは、そこからです。
まず知った、大学受験の3つのルート
大学受験の知識がなかったわが家は、まず入試の種類を調べました。
大学入試の主な区分は、次の3つです。
AO入試(総合型選抜)
志望理由書や活動報告書などの書類に加え、面接、小論文、プレゼンテーション、口頭試問、教科テストなどを大学ごとに組み合わせて評価する入試です。
野球の経験があるだけで合格できる入試でも、勉強をしなくてよい入試でもありません。
これまでの経験から何を学んだのか。その経験を大学での学びにどうつなげたいのか。本人の言葉で伝える必要があります。
公募推薦入試(学校推薦型選抜)
高校長の推薦を受けて出願する入試です。
評定平均などの条件が設けられることがあり、推薦書や校内手続きも必要になります。面接、小論文、基礎学力検査など、選考方法は大学によって異なります。
一般入試(一般選抜)
教科・科目の試験や大学入学共通テストなどを中心に受験する方法です。
私立大学と国公立大学、大学独自の試験と共通テスト利用などで、必要な科目や仕組みが変わります。
制度を調べて初めて、同じ「大学を受験する」でも、準備する内容がまったく違うことを知りました。
高校球児には、野球特有の進路もある
高校球児の進路には、一般的な入試とは別に、野球をきっかけとした話が出ることがあります。
大学から声がかかる
大学側から、高校や監督を通じて声がかかる場合があります。
ただし、声がかかったことと、大学の入試に合格することは同じとは限りません。希望する学部へ進めるのか、どの入試を受けるのか、入部や学費の条件はどうなっているのかを確認する必要があります。
セレクションや練習会を受ける
実技や練習参加を通じて、大学野球部が入部希望者を見る機会です。
大学によっては、セレクション通過者だけが特定の入試へ出願できます。一方で、セレクションの通過が入試合格を保証しない大学もあります。
スポーツ推薦を利用する
「スポーツ推薦」は、全国で統一された一つの入試名ではありません。
学校推薦型選抜の運動選手枠、総合型選抜のスポーツ枠など、大学によって正式な位置づけが異なります。
競技実績だけでなく、評定、推薦、面接、事前審査などが求められる場合があります。合格後の入部義務や競技継続、専願、特待制度の条件も確認が必要です。
高校球児の場合は、「セレクション」「スポーツ推薦」という呼び方だけで判断せず、大学の募集要項に書かれた正式な入試区分を確認することが大切だと分かりました。
なぜAO入試を受けてみようと思ったのか
わが家がAO入試に可能性を感じた理由は、息子の高校野球の経験と、寮で身につけた自己管理の経験です。
高校野球を最後まで続けたこと。
親元を離れ、生活のことを自分で管理してきたこと。
チームの中で自分の役割と向き合ったこと。
けがや不調、レギュラー争いを経験しながら、それでも目標に向かって続けてきたこと。
大会成績だけでは表せない経験を、息子自身が振り返り、言葉にする機会になるのではないかと思いました。
もちろん、準備不足なのは親子とも分かっていました。
それでも、時期的にはまだ出願に間に合います。最初から可能性を閉じるより、「まずは受けるだけ受けてみよう」というのが、そのときの正直な気持ちでした。
合格だけが目的ではありません。
なぜこの大学なのか。なぜこの学部で学びたいのか。
これまで野球中心だった息子が、自分自身を見直し、進路について深く考えるよい機会になるとも感じました。
経済学部か、文学部か
将来就きたい職業について聞いたとき、息子から返ってきたのは「しっかりお金を稼ぎたい」という率直な言葉でした。
まだ、具体的な職業名まで決まっているわけではありません。
お金や社会の仕組みを学ぶ方向として、経済学部が候補になりました。
もう一つは、本人の得意科目をさらに伸ばすという考え方です。その方向から文学部も候補になりました。
「将来どのように働きたいか」と「今の自分は何が得意か」。
二つの軸から学部を考え始めたものの、最終的にどちらを選ぶのか、親である私にはまだ分かりません。
経済学部と文学部では、AO入試の内容が少し違う
わが家が候補にしている大学には、これまでの活動経験を生かせる自己推薦型のAO入試があります。
野球の活動を伝えるには、大会パンフレット、メンバー表、新聞や雑誌の記事、表彰状の写しなど、実績を確認できる資料が必要になる場合があります。
もちろん、野球を続けたというだけで、誰もが出願条件を満たすわけではありません。
わが家の場合は、まず学校の担任の先生へ相談しました。
先生からいただいたのは、「複数の公式大会で上位に進んだ事実は実績になるので、書いた方がいい」というアドバイスでした。
この助言から、息子の野球実績が自己推薦型の出願条件を満たすことが分かりました。高校野球で積み重ねてきた経験が、AO入試へ挑戦するための入り口になりました。
経済学部と文学部は、どちらも最初に書類選考があり、その後に文章を書く試験と面接が行われます。しかし、課題の内容や評価される点は同じではありません。
また、この大学のAO入試では、経済学部と文学部の両方へ出願することはできません。どちらか一つを選ぶ必要があります。
出願締切は、もう目前です。
この記事を書いている今も、時間は進んでいます。
AO入試の意思を学校へ伝えるため、息子は寮へ戻った
2学期が始まる前に、息子は地元から寮へ戻っていきました。
戻った目的の一つは、AO入試を受けたいという意思を学校へ伝えることです。
息子が経済学部と文学部のどちらを選ぶのか。学校とどのように話し、何を準備するのか。
親である私には、まだ分かりません。
この先も、電話やLINEで事後報告を受けることになると思います。
遠方の寮で暮らす子どもの進路では、親子が常に同じ情報を持ち、隣で一緒に準備できるわけではありません。
親にできることは限られています。
だからこそ、担任の先生、進路指導の先生、野球部の監督や顧問など、学校を大いに頼りたいと思っています。
実際に担任の先生へ相談したことで、公式大会で上位に進んだ経験を、自己推薦型の実績として書けることが分かりました。親子だけで募集要項を読んでいたら、その実績をどのように扱えばよいのか判断できなかったと思います。
必要であればZoom面談をお願いし、本人・学校・親の認識をそろえる方法もあります。
大学や学部を決めるのも、志望理由書を書くのも、受験するのも息子です。
親が代わることはできません。
親にできるのは、日程や費用を整理すること、必要な書類を確認すること、そして電話やLINEの向こうにいる息子の話を聞くことなのだと思います。
高校球児にAO入試は向いているのか
高校球児だからAO入試に向いている、と一概に言うことはできません。
野球の実績があるだけで合格できるものでもありません。
けれど、野球や寮生活を通して得た経験を自分の言葉で説明し、それを大学での学びにつなげられるなら、検討する価値のある選択肢だと思います。
大切なのは、本人が次のことに向き合えるかどうかです。
- 野球や寮生活から何を学んだのか
- なぜその大学なのか
- なぜその学部で学びたいのか
- 大学での学びを将来にどう生かしたいのか
息子にとってAO入試の準備は、受験対策であると同時に、野球中心だった高校生活を振り返り、その先の人生を考える時間になりそうです。
まとめ|親に分からないまま進んでいくのも、寮生活のリアル
中学生のとき、わが家が見ていたのは甲子園でした。
高校卒業後の進路まで考える余裕はありませんでした。
ゴールデンウィーク前に外部受験の希望を聞いても、最後の夏を前に、受験について調べる時間は取れませんでした。
地方大会の決勝で敗れ、すでに夏休みに入ってから、先輩の一言で初めてAO入試を知りました。
そして今、息子は再び寮へ戻り、自分で学校へ意思を伝えようとしています。
このあと何を選び、どのように準備するのか、親にはまだ分かりません。
それでも、離れた場所からできることを探し、学校を頼りながら見守っていきたいと思います。
この記事も、わが家の受験も、まだ途中です。
電話やLINEで届く息子からの事後報告とともに、これから分かったことや感じたことを追記していきます。
同じように、高校野球を終えてから進路に向き合う親子や、遠方の寮で頑張る子どもを持つ親御さんの参考になればうれしいです。
参考資料
文部科学省:総合型選抜における評価方法
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/1402201.htm

コメント